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「いつもの薬が欲しいだけなのですが・・。」
「薬だけください。」
こんなふうに、患者さんが受付窓口でよく言われます。
特に、冬場は風邪やインフルエンザがうつるかもしれないと不安なのでしょう。
「あんまり病院には長居したくないの・・」
「インフルエンザが流行っているから・・」
患者さんの立場になるとよく分かることです。
ですが、投薬のみで診察もしないなんていうことはありえません。
時々「○○病院では薬だけもらえたよ~」なんていう方もおられます。
本日は、投薬のみで診察なしは可能なのか?
別の病院では薬だけを受付窓口で出しているのか、ルールをみながら書いていきます。
投薬のみで診察なしは合法?
新型コロナウイルスで大変な状況になってきている令和2年。
そんな中、いつもの薬だけなのに病院へ行くのは怖い・恐ろしいなんて思われている患者さんもおられます。
厚生労働省が、あたかも窓口で薬だけを出してもらえるかのようなニュアンスの文面を、早々に公表。
投薬のみがOKなんて、いつも間に決められたのか・・(・・?
いやいや、このご時世だから特例であってもおかしくないのか・・なんて、現場はざわつきました。
どんな患者さんに窓口で処方しても良いのか、誰にでも受付でOKの対応をするのか、何の話しもないわけです。
そもそも、そんな通達もまだきていません。
それなのに、患者さんからは「受付で薬もらえるのですか?」という投薬のみの問い合わせがよくあるのです。
診察もせず受付窓口で薬を出すことはあるの?
風邪やインフルエンザなど、体調が悪いときは診察しなければ、どんな薬を処方したら良いのかわかりません。
もちろん、患者さんは待ち時間があっても順番を待って診察を受けます。
ですが、慢性疾患のように、普段あまり自覚症状もないし元気な方。
高血圧や高脂血、糖尿病などの患者さんは、いつもの薬をもらうだけのときもあるわけです。
体調はいつも通り変わったこともないし、薬だけなんだから受付で欲しいと思われます。
診察なんてしてもらわなくても、特に変化はないのですから・・。
でも、投薬のみで薬だけというのはできません。
もし、そんな病院があったらちょっと考えものです。
うちの医院では、どんなに待ち時間があっても、順番に診察室へ入ってもらいます。
受付窓口では「診察をしてもらわず、投薬のみは規則があってできないのです・・」と返答。
では、どんなルールがあるのかみていきましょう。
薬だけで診察なしが良い規則ってない?
患者さんが先生の顔も見ずに、薬だけを持って帰ることができるという規則はありません。
医師法20条に「無診察治療等の禁止」というのがあります。
医師は、自ら診察しないで治療をし、もしくは診断書もしくは処方せんを交付してはならない。(保険診療としても当然認められない。)
医師法20条
無診察治療という意味は
『例えば定期的に通院する慢性疾患の患者に対し、診察を行わず処方せんの交付のみをすること。
実際には診察を行っていても、診療録に診察に関する記載が全くない場合や、「薬のみ」等の記載しかない場合には、後に第三者から見て無診察治療が疑われかねない。
このようなことを避けるためにも診療録は十分記載する必要がある。』
と書かれています。
なので、この医師法に反した先生は違法ですよね。
投薬のみで診察なしは、保険診療上、適切ではありません。
本人の診察なしが良い例外
ただ、例外もあって、本人の診察がなくても良い場合があるのです。
投薬という項目の診療報酬点数において、
投薬は本来直接本人を診察した上で適切な薬剤を投与すべきであるが、やむを得ない事情で看護に当たっている者から症状を聞いて薬剤を投与した場合においても、再診料は算定できるが、外来管理加算は算定できない。
また、多忙等の理由により、投薬のみの要請があり、簡単な症状の確認等を行った場合にあっては、外来管理加算は算定できない。
診療点数早見表より
と書かれています。
やむを得ない場合は、家人から患者さんの様子を詳しく聞いて薬を出すということ。
それでも、受付窓口でハイ!というわけではありません。
看護にあたっている人に、かならず診察室へ入ってもらいます。
患者さんの本人の診察ではありませんが、症状の確認などを変わりの人から行ったときは例外なのです。
その時は、外来管理加算は取ってはいけません。
外来管理料の加算については
『再診料に外来管理加算を取る場合。どんなときに加える点数?』
こちらの記事でどうぞ。
まとめ
投薬のみで診察をしないというルールはなく違法だということ、お分かり頂けましたか。
「〇〇クリニックでは、薬だけもらえたで~」と言われる患者さん。
待ち時間が長いとイライラもするし、変わりない体調なら窓口で薬出すぐらい・・という患者さんの気持ちもわかります。
でも、受付窓口の医療事務はルールに則って仕事をしています。
診察には、医療行為を診療報酬点数に置きかえて計算するので、投薬のみというルールがない限りできません。
「厚生労働省からの通達がありません。」
「ルール・規則ですから・・」
と言うしかないのが現状です。
患者さんを診察することなく投薬、注射、処方せんの交付はできないとされているのですから・・。
新型コロナウイルスで大変なことはわかりますが、無診察治療の禁止という規則があるのです。
まぁ、もっと蔓延したら(考えたくはないですが・・)、今回だけの特例ルールとなるでしょうが、現段階では解らなすぎます(^▽^;)
厚生労働省がもっと正確でわかりやすい情報を国民に、いや医療現場に先に早く伝えて欲しいと思います。
普段、薬だけでもOKという病院は、ちょっと怪しいと思うのは私だけでしょうか。
薬のみで診察なしというのは、保険上のルールではあり得ません。
昔の名残りで容認されいる病院があるかもしれませんが違法です。
外来管理料の加算や特定疾患療養管理料を請求されていたら、それは不正かも・・です(^^;)
規則は規則、ルールだとばかり言っている病院は、頭がガチガチで融通が利かないと思われるかもしれませんが、合法で診療しているのです。
ご了承くださいね(^^)
~追記~ 2020.4.22
新型コロナウイルスの影響で、処方方法にも特例措置があります。
対面の診察がなしで、電話で薬の処方が可能な医療機関も・・。
『薬だけもらいたい患者さん。新型コロナで特例措置の連絡事項』
こちらの記事でどうぞ(*´▽`*)