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2022年度の診療報酬点数改定が目の前に迫ってきました。
現役の医療事務員さんは、説明会に出向いたりオンラインセミナーで確認したりしている時期ですよね。
そろそろ、診療報酬点数改定で関係のある項目について意識し始めていることではないでしょうか。
勤務先の医療機関によって関係あるなしの項目があるので、改定の年度はチェックが必須です。
医療事務をめざされているあなたには、新点数での学習が待っています(^^)
今日の「感染対策向上加算」に関する内容について。
これは、大きな病院から中小の病院・入院設備のあるなしに関係なく診療所、全てに算定できる加算点です。
何より、お互いに補い合って連携したりして算定します。
もうすでに確認済みかもしれませんが、今までの「感染防止対策加算」という名称が「感染対策向上加算」というふうに変更となるのです。
令和4年の診療報酬点数改定に向けて、詳しく書いておこうと思います。
診療所にも関係ある項目ではあるのですが、結局のところ・・、この加算点は取りにいった方が良いのか?
なぁ~んて思う「くぅ」のたわごとでもあります(^▽^;)
外来感染対策向上加算って何?届出するの?
もともと感染防止対策加算というのは、大きな病院が入院の初日に算定するものでした。
当然、診療所・・特に入院設備のない小さいクリニックには全く関係のない点数。
医療機関の規模については
『大きい病院と小さい病院の違いは?どちらの方が働きやすい?』
こちらの記事も参考にしてください。
大きな病院での加算点
今までは、感染防止対策加算1の390点。
急性期病院にて感染対策がきっちりできていると、入院の初日に取れる点数。
地域で1・2番目に大きい病院が算定していますよね~。
もちろん、うちのように診療所で入院設備のないところには関係なかったこと。
この大きい急性期病院には、他にもプラスの点数がありました。
抗菌薬適正使用支援加算100点
感染防止対策地域連携加算100点
合計で590点です。
中小病院で、このような点数を算定できなかった場合は、感染防止対策加算2の90点を算定したはず。
急性期病院が算定している合計590点の点数は、令和4年の改定で感染対策向上加算1となり、まとめて合算で710点に変更となっています。
抗菌薬なんて書かれている加算点も、このコロナ禍でもお分かりのようにウイルスに対しても関係してくるので、抗菌薬という名称はなくなるのでしょうね。
感染防止対策加算2を算定した病院では、感染対策向上加算2で175点になっています。
新設で感染対策向上加算3なんていうのもあり、75点です。
他にも加算点がありますよ(^^;)
ここまでは大きな病院のことで、診療所の医療事務の方は知らなくても大丈夫(*^^)v
診療所で算定できる新しい点数
今回の令和4年の点数改定では、うちのような診療所でも感染対策向上加算が取れるというのが注意するところです。
外来感染対策向上加算の6点。
診療所に向けて新設された項目となっていて、頭にも『外来』と書かれていますよね。
入院設備のないクリニックでもOK。
基本的には、初診料や再診料に加算する点数です。
月に1回取れますが、これ届出が必要となっています。
算定要件や施設基準を見なければなりません。
算定要件
厚生労働省より
[算定要件]
組織的な感染防止対策につき別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関(診療所に限る。)において診療を行った場合は、外来感染対策向上加算として、患者1人につき月1回に限り所定点数に加算する。
個別改定項目として書かれてある資料から抜粋させていただきました。
先ほども書きましたが、この外来感染対策向上加算を算定する基本の点数は、初・再診料の他にもあります。
もともとベースとなる点数とは
ア 初診料
イ 再診料
ウ 小児科外来診療料
エ 外来リハビリテーション診療料
オ 外来放射線照射診療料
カ 地域包括診療料
キ 認知症地域包括診療料
ク 小児かかりつけ診療料
ケ 外来腫瘍化学療法診療料
コ 救急救命管理料
サ 退院後訪問指導料
シ 在宅患者訪問診療料(Ⅰ)・(Ⅱ)
ス 在宅患者訪問看護・指導料、同一建物居住者訪問看護・指導料
セ 在宅患者訪問点滴注射管理指導料
ソ 在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料
タ 在宅患者訪問薬剤管理指導料
チ 在宅患者訪問栄養食事指導料
ツ 在宅患者緊急時等カンファレンス料
テ 精神科訪問看護・指導料
たくさんありますね。
これらの点数を算定したときに、加算として患者一人につき月1回取れます。
月初めに初診で来られた患者さんが、同月に受診された再診料を算定するときには取れません。
月に1回だけです。
よっしゃー、算定要件はこれで分かった~~OK!!(*’-‘)b
けど、施設基準に適合していないとダメなわけですよね~。
施設基準
施設基準なのですが、まぁ、なんとこれ・・通知が19個もあります。
しかも、全てに該当する医療機関でなければならないわけです。
届出が必要となっているので、地域の厚生局にも提出しなければなりません。
19番までですよ~。
それだけで、読むのイヤになりますよね。
でも書きます(笑)
[施設基準]
(1)専任の院内感染管理者が配置されていること。
(2)当該保険医療機関内に感染防止対策部門を設置し、組織的に感染防止対策を実施する体制が整備されていること。
(3)当該部門において、医療有資格者が適切に配置されていること。
(4)感染防止対策につき、感染対策向上加算1に係る届出を行っている保険医療機関又は地域の医師会と連携すること。
(5)診療所であること。
(6)感染防止に係る部門(以下「感染防止対策部門」という。)を設置していること。この場合において、第20の1の(1)のイに規定する医療安全対策加算に係る医療安全管理部門をもって感染防止対策部門としても差し支えない。
(7)(6)に掲げる部門内に、専任の医師、看護師又は薬剤師その他の医療有資格者が院内感染管理者として配置されており、感染防止に係る日常業務を行うこと。なお、当該職員は第20の1の(1)アに規定する医療安全対策加算に係る医療安全管理者とは兼任できないが、第2部通則7に規定する院内感染防止対策に掲げる業務は行うことができる。
(8)感染防止対策の業務指針及び院内感染管理者の具体的な業務内容が整備されていること。
(9)(7)に掲げる院内感染管理者により、最新のエビデンスに基づき、自施設の実情に合わせた標準予防策、感染経路別予防策、職業感染予防策、疾患別感染対策、洗浄・消毒・滅菌、抗菌薬適正使用等の内容を盛り込んだ手順書(マニュアル)を作成し、各部署に配布していること。なお、手順書は定期的に新しい知見を取り入れ改訂すること。
(10)(7)に掲げる院内感染管理者により、職員を対象として、少なくとも年2回程度、定期的に院内感染対策に関する研修を行っていること。なお当該研修は別添2の第1の3の(5)に規定する安全管理の体制確保のための職員研修とは別に行うこと。
(11)(7)に掲げる院内感染管理者は、少なくとも年2回程度、感染対策向上加算1に係る届出を行った医療機関又は地域の医師会が定期的に主催する院内感染対策に関するカンファレンスに参加していること。なお、感染対策向上加算1に係る届出を行った複数の医療機関と連携する場合は、全ての連携している医療機関が開催するカンファレンスに、それぞれ少なくとも年1回程度参加し、合わせて年2回以上参加していること。また、感染対策向上加算1に係る届出を行った医療機関又は地域の医師会が主催する新興感染症の発生等を想定した訓練について、少なくとも年1回参加していること。
(12)院内の抗菌薬の適正使用について、連携する感染対策向上加算1に係る届出を行った医療機関又は地域の医師会から助言等を受けること。また、細菌学的検査を外部委託している場合は、薬剤感受性検査に関する詳細な契約内容を確認し、検査体制を整えておくなど、「中小病院における薬剤耐性菌アウトブレイク対応ガイダンス」に沿った対応を行っていること。
(13)(7)に掲げる院内感染管理者は、1週間に1回程度、定期的に院内を巡回し、院内感染事例の把握を行うとともに、院内感染防止対策の実施状況の把握・指導を行うこと。
(14)当該保険医療機関の見やすい場所に、院内感染防止対策に関する取組事項を掲示していること。
(15)新興感染症の発生時等に、都道府県等の要請を受けて発熱患者の外来診療等を実施する体制を有し、そのことについてホームページ等により公開していること。
(16)新興感染症の発生時等に、発熱患者の診療を実施することを念頭に、発熱患者の動線を分けることができる体制を有すること。
(17)「抗微生物薬適正使用の手引き」(厚生労働省健康局結核感染症課)を参考に、抗菌薬の適正な使用の推進に資する取組を行っていること。
(18)新興感染症の発生時等や院内アウトブレイクの発生時等の有事の際の対応について、連携する感染対策向上加算1に係る届出を行った医療機関等とあらかじめ協議し、地域連携に係る十分な体制が整備されていること。
(19)区分番号A234-2に掲げる感染対策向上加算に係る届出を行っていない診療所であること。厚生労働省 個別改定項目についてより
簡単にまとめると
・専任の院内感染管理者を配置して、感染防止対策に関する業務を整備する
・感染対策向上加算1を算定している病院か医師会と連携する
・研修やカンファレンスなどに参加する
・新興感染症発生時に発熱外来の体制を取り公表する
このような準備を整えて、診療所でも届出することによって算定できるのが今回の外来感染対策向上加算6点です。
届出用紙(様式1の4)を見ても・・。
1.院内感染管理者
2.抗菌薬適正使用のための方策
3.連携保険医療機関名又は地域の医師会
4.都道府県等の陽性を受けた新興感染症の発生時等の体制
こんな感じになっています。
連携強化加算
外来感染対策向上加算の係る届出を行っている診療所が、感染対策向上加算1を行っている病院に対して、定期的に院内の感染症発生状況等を報告している場合の加算です。
過去1年間に4回以上の感染症の発生状況や抗菌剤の使用状況等を報告していること。
要するに、大きな急性期病院などと連携しなくてはなりません。
感染対策向上加算1の710点を算定している病院に限るとなっているからです。
連携強化加算は3点となっています。
サーベイランス加算
院内感染対策サーベイランス(JANIS)や感染対策連携共通プラットフォーム(J-SIPHE)等、地域や全国のサーベイランスに参加して加算できます。
感染防止に対する情報を提供しているということでしょうか。
サーベイランス加算は1点です。
連携強化加算とサーベイランス加算は、届出用紙(様式1の5)で申請します。
診療所でもマックス10点算定
令和4年4月からの新設の項目。
外来感染対策向上加算は、入院設備のない診療所でも取れる合計10点の点数です。
けれど・・。
たった10点を算定するのに・・ですよ~(>_<)
こんなこと・・医療事務が言ってはいけないのかもしれませんが・・。
ハードルが高いような気もするし、言葉悪いですけど報酬に見合わない点数のような気もします。
準備も整備も大変そうで、連携や報告や研修や・・。
だいたい、院内感染対策サーベイランス(JANIS)や感染対策連携共通プラットフォーム(J-SIPHE)って何?
聞いたこともないわーって感じ。
(; ̄ー ̄)…ン? 私が勉強不足なだけって? そうかも・・
でも、この施設基準は厳しすぎるとは思いませんか。
200点、300点なら大きいですが、10点でしょ。
あー、もちろん患者さんの立場になると、10点でも上がると支払ってもらう診察代も増えるので話しは違いますが・・。
医療機関側からすると、10点のために算定要件・施設基準を満たすこと。
これからすること多過ぎでしょうって感じがします。
もしかしたら、マックス10点だけではなく6点だけ取りにいこうなんてことになるかもしれません。
たかが6点でしょ(~_~;) アッ、失礼しました・・
まさか届出だけして、何もしないなんてありえないですしね~。
カンファレンスに参加するとか研修を行うとか、さまざまな取り組みが必要。
んんー、診療所の先生方はどうされるのでしょうか。
知り合いの診療所では、根っから算定なんて考えてないとか。
そもそも、コロナ検査を院内でしていない・発熱外来のようなこともしていないという医療機関では算定できませんもんね。
たかが10点、されど10点。
一人の患者さんに10点算定、一ヶ月の患者さんの人数、年間でどれくらいの増収なのか。
医療機関の経営面からしたら、やっぱり算定したいですよね。
けど、個人的にはどうするんだろう?と感じている次第です。
ちなみに、診療報酬改定は4月1日からですが、これらの新点数に関しては整備がいるのですぐにとはいきません。
なんせ、届出も必要ですから・・。
地方厚生局への提出には期限があります。
4月から算定するためには4月20日まで。
算定される診療所は早めの準備をしましょう。
言いたい放題書いてしまいましたが、算定される場合は気を付けて下さいませ。
こちらの厚生労働省の「令和4年度診療報酬改定の概要」より個別改定事項が参考になると思います。
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000911809.pdf
まとめ
令和4年の診療報酬改定で、診療所でも算定できる新設項目について書いてみました。
コロナ禍の影響で、感染対策が重要視され評価されたのだと思います。
外来感染対策向上加算の6点。
マックスは10点です。
地域の基幹病院(急性期病院)と連携することによって加算できる新しい点数となっています。
算定要件や施設基準をよく読んで、算定される診療所は準備していきましょう。
なんだかハードルが高い・面倒な点数だな~と感じてる、いけない医療事務員です(笑)
あなたの診療所では算定されますか?
ご意見、お聞かせくださいね~。
今日は、「くぅ」のたわごとでもありました(;^_^A
《追記1》 2022.4.1
新年度。
あなたがお勤めの医療機関では、この外来感染対策向上加算の算定はされますか?
うちでは、まだ未定で保留中です。
ハナっから発熱外来をされていない医療機関は、そこからのクリアになりますが・・。
コロナ検査もしている診療所は、6点が取れるのか施設基準を確認すると思います。
前向きに算定しようと思っていても、引っかかる「感染対策向上加算1に係る届出を行った医療機関等と連携する」という部分。
施設基準の(4)(11)(18)。
ここでは、連携している医療機関等とあります。
うちのように、地域に感染対策向上加算1を算定している大きな急性期病院がない場合。
地域の医師会でもOKと書いてありますよね。
大きな病院か医師会かのどちらかと連携すれば良いわけです。
ですが、以前から疑問だった(11)の『定期的に主催する院内感染対策に関するカンファレンスに参加していること』のカンファレンス。
いつ・どこで・どんなカンファレンスを行っているのか分かりません。
何の情報もないでは困りますから・・。
外来感染対策向上加算の6点の算定のために準備するからには、ここはハッキリしておかないと・・。
ということで、一昨日、医師会に問い合わせてみました。
そうしたら、なんと医師会の方も困った様子で何の準備もできていないということ。
詳しい情報は何一つ得られませんでした。
地域に急性期病院のない診療所は、いったいどうしたら良いのでしょう。
算定したくてもできませんよね~。
連携する医師会の準備が整っていない段階で、施設基準クリアとするのでしょうか。
これ、いつになったら届出できるのか不明です(>_<)
このあたりは、きっとあなたも疑問に思われていたのではないでしょうか。
私も気にはなっていたのですが、外来感染対策向上加算の算定を保留にしている状態だったのであえて触れずにいました。
でも、前向きに算定を検討されている診療所にとっては死活問題。
あ~、ちょっとオーバーでした(;^_^A
医師会も、今の現段階では頭を悩ませておられるのでは・・。
こんな状態で、施設基準をクリアできる診療所はどれだけあるのでしょう。
なぁ~んて、4月に入って思ったわけで追記してみました。
《追記1》 2022.4.4
いやぁ~、月初めはレセプト請求業務も大変な中、診療報酬点数改定の年度ともなると、それなりに新しいことが増えて対応に気が揉みますね~。
先日の追記にも書きましたカンファレンスに参加という件。
その後に、厚生労働省からの疑義解釈資料をみつけましたので、追記しておきます。
問 29 外来感染対策向上加算の施設基準において、「感染対策向上加算1に係る届出を行った医療機関又は地域の医師会が定期的に主催する院内感染対策に関するカンファレンスに参加していること」とされているが、当該カンファレンスの内容は、具体的にはどのようなものであればよいか。
(答)具体的な定めはないが、感染対策向上加算1の届出を行っている保険医療機関は、地域の医師会と連携することとされていることから、感染対策向上加算1の届出を行っている保険医療機関が主催するカンファレンスの内容を参考として差し支えない。なお、例えば、以下に掲げる事項に関する情報共有及び意見交換を行い、最新の知見を共有することが考えられる。
(例)
・ 感染症患者の発生状況
・ 薬剤耐性菌等の分離状況
・ 院内感染対策の実施状況(手指消毒薬の使用量、感染経路別予防策の実施状況等)
・ 抗菌薬の使用状況
疑義解釈資料の送付について(その1)より
回答の例に挙げられているような内容でカンファレンスを開くのですよね。
で、医師会は感染対策向上加算1に係る届出を行った医療機関と連携しなければならないとのこと。
急性期病院のカンファレンスを参考にして、医師会が開催するのを待つことになるのかな~。(。´・ω・)?
外来感染対策向上加算6点を算定するには、そう簡単ではありませんね。
それでも、分からないこと・疑問があると問い合わせてスッキリしたくなる性分の私・・。
算定する・しないに関わらず(^▽^;)
まぁ、地方厚生局・保険医協会・医師会などへの質問が相当数あったのでしょうね。
数多くのQ&Aがある事務連絡となっています。
他にもあなたの気になることがあるかもしれません。
「疑義解釈資料の送付について(その1)」で、ネット検索してみてください。
《追記3》 2022.4.14
診療所で外来感染対策向上加算を算定するのは、敷居が高いような気がしている私(;^_^A
先週にも、医師会から連絡が入っていました。
・定期的に主催する院内感染対策に関するカンファレンス
・新興感染症の発生等を想定した訓練
など、今後医師会に於いても開催を予定するとのこと。
令和4年度中に何らかの連絡が入ることでしょう。
これで施設基準を満たしたと仮定して・・。
外来感染対策向上加算を算定するための届出を先に申請しても良いという解釈を私はしました。
いろいろ準備が大変ですね~~ ┐(´∀`)┌ヤレヤレ